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2020年、「最悪の一年」を乗り越える。 コロナ禍を生き抜くスタートアップのリアル。

2020年、「最悪の一年」を乗り越える。 コロナ禍を生き抜くスタートアップのリアル。

ドットライフ 代表の新條です。

2012年4月に社会人になり、2014年1月に経営者になった自分にとって、2020年は大きな転機となる一年だった。リーマンショックも東日本大震災も経験していない中、とんでもないインパクトで襲ってきた新型コロナ感染症の波。企業活動はもちろん、人命にまで影響をもたらす一大事で、社会が大きく変化した。

そんな中、7期目の小さなスタートアップであるドットライフにも大きな変化が生まれている。既存事業の売上がYoY200%の成長、オフィス解約に働き方のDX。組織の成長痛とリカバリーの繰り返し。過去どの時期よりもアップダウンが激しい一年を過ごしている。

「コロナ禍」と言われてから半年が過ぎた中、いちスタートアップがどんな風に試行錯誤しているのか、普段お世話になったり、心配をおかけしたりしている方々への近況報告も兼ねて、お伝えしていきたい。

事業ストップの危機感から一転、YoY200%の成長軌道へ

まずは事業について。結論として、この市況の中、事業は過去に比べても一番良いペースで伸びている。いわゆるコロナの特需の恩恵を受けるタイプの業種ではなく、むしろお客様の稼働が止まってしまう状況もあったので、緊急事態宣言直後は危機感が大きかった。それでも、ご相談をいただけるパートナーの皆様方、環境の変化や無茶ぶりににうまく対応してもらったメンバーのおかげで結果的に事業を推進することができた。

具体的には、以下2つの事業が伸びている。

①コンテンツ制作事業
another life.で培った、個人を魅力的にコンテンツ化するストーリーテリングのノウハウを通じて、企業のオウンドメディアや採用サイト、社内報などの記事制作を提供している。特に最近は②のキャスティングと合わせて、取材対象のリサーチから企画出しまで含めたパッケージ形式で、パートナー企業の編集部を担うモデルで伴走させていただくケースが増えている。

②キャスティング事業
another life.や①のコンテンツ制作で深くお話を伺わせていただいた様々な分野のスペシャリストの方々について、人を探している企業やメディアとのマッチングを行っている。具体的には、テレビ番組やwebメディアなどを中心とした出演者のキャスティングや、法人の研修、勉強会に対する講師のご紹介、オンラインイベントの登壇者のご紹介から運営サポート、小中高大学の授業への民間講師のご紹介など。あらゆる分野の「人探し」、その後のコンテンツ制作やオンラインイベントの運営のサポートまで実施している。

また、社会変化に伴う新しい役割として、神奈川県と連携協定を締結し、コロナ禍で分散断絶してしまったコミュニティ活動を支援する取り組みにも参加させていただいている。

微力ではあるが、社会全体が深刻な状況に置かれ、官民横断で施策を行なっていくべき状況でこのような機会をいただけたことに、いち企業家としてとても感謝すると同時に、改めて身が引き締まる。

既存事業が伸びている一方で、3月にリリースしたanother life.profileや、水面下の新規事業などはまだ市場とのフィットを目指して試行錯誤している。これまで以上に変化が求められる環境下で、事業ポートフォリオ的にも、新しい挑戦でのブレークスルーは必須なため、会社の次の柱を生み出さねばならないという危機感も同時に大きい。

楽観的な持たざる経営からの脱却

経営という観点では、事業への影響以上に資本政策や財務戦略への影響が大きかった。これまで何度かキャッシュ危機に瀕したことはあるが、正直なんとかなるだろうという盲目の自信があった。最低限の固定費数ヶ月分を手元に残し、あとは全て投資。採用も行い、気づけばオフィスの空きが減っていく。キャッシュポジションという意味では、よく言えば前のめり、悪く言えば楽観的な姿勢での経営だった。

ところが、緊急事態宣言で様々な産業が壊滅的なダメージを受けていく中で、初めて真剣に会社が潰れる可能性を感じ始めた。実際問題、足元のキャッシュが欠乏していたわけでは全くない。ただ、「万が一」が起こり得る状況になった、という得体の知れない不安に近かった。

例えるならば、18歳の時、初めてサーフィンをした感覚に似ている。沖合で強い波に打たれて体勢が保てない。そのうち波に飲まれて視界に渦が巻く。流される中もがいてやっと水面から顔を出す。足が付くところまで行って初めて安堵する。自分の力でなんとかならない外部の力には大きな恐怖感を抱いた。新型コロナ感染症が経済にもたらす波はとてつもなく大きく強かった。

そんな恐怖感から、キャッシュポジションを高めることに奔走した。具体的には取引がある複数の金融機関からコロナ融資をひき、国や自治体が発行した助成金や補助金を多数申請した。この時期、財務経理担当のメンバーには本当に助けられた。

余談だが、緊急事態宣言下の銀行や自治体の産業系窓口は救急の医療従事者のような様相を呈していた。いつ入金されるのか一刻も早く知りたい経営者が列をなす中で、つい先日新しく始まった融資制度を、従来の数十倍以上のペースで捌いていく。担当の方は皆さんかなり疲弊していた。そういった方々が我々含め企業活動の生命を支えてくれていたので、頭が上がらない。

結果的に、それまでの現預金を固定費Xヶ月分とすると、4X(4倍)以上のキャッシュを確保することができた。最悪のケースを想定して備えたが、結果的に事業への影響は小さく済んだので、これまでの期に比べて大きく財務体制を改善することができた。もちろんリスクをとって投資を踏んでいくフェーズも必ず来るが、食料が尽きて飢餓になるようなこの感覚をシュミレーションできたことは、今後の経営にとって大きな学びになった。     

成長痛と孤立化と投資遅れ、組織の疲弊

この半年間、何よりも大変だったのは組織面だった。主な原因は3点。

1:事業成長に伴うリソース不足
ありがたいことに、売上が伸びていく中、先の通りキャッシュ確保完了まで採用を進めなかった結果、特定部署の業務量がキャパ超えをした。売上のありがたみが以前よりも増し、相談いただいた案件はほぼ全て受けていたら、メンバーに大きな負荷をかけてしまい、私自身これまでの比じゃないレベルで現場にいる時間が増えた。船長室を空けてしまう機会が増えたことが他の課題にもつながっている。

2:オフィス解約、孤立化と表裏一体の環境
2月から完全在宅に移行していたこと、以前から営業・取材などで分散拠点的な動き方をするメンバーが多かった背景を踏まえ、4月に意思決定、7月に解約を完了した。その分他拠点で利用できるサービスオフィスを契約し、フルリモート+サテライトオフィスという働き方を選んだ。

この分野は会社・経営者ごとに意見が別れる分野だと思うし、私自身他社事例を勉強しているが、とにかく奥が深い。フルリモートでこれまで通り業務ができるかと問われれば確実にYesだ。フルリモートで個々人が各々の大切にする過ごし方ができる社会になっていくべきだし、そういった会社を目指したい。一方で、フルリモートで一人一人が、会社全体がこれまで以上の成果を出すための手法論はまだまだ模索中だ。

この規模ですら、従来の組織マネジメントでは一人一人が孤立化していく。視野狭窄となり気づけば全体のための行動が取りづらくなる。環境を問わず自分の責任をしっかりと全うするのはもちろん大前提。ただ、自分だけで価値を生み、一人で喜怒哀楽を抱え込んでは、チームで働く意味がない。自立した個人が集まり、相互作用できるチームを、リモートで作る。文字にするのは簡単だが、とても大きな挑戦だと感じる。

3:人事制度設計着手の遅れ
今年中旬から着手予定だった人事制度設計が、先の融資対応の優先、現場稼働優先で後手に遅れた。正確には進めてはいたが本気度が足らなかった。リモートワークで持つPJT数が増え、過度なマルチタスクを進めた結果、経営者として踏み込みが甘い部分があった。

この数ヶ月間、メンバー一人一人と向き合う時間をとにかくまめにとり、コミュニケーションで危険を察知し、手を打っていこうとした。1on1の頻度を以前よりも増やし、今会社で何が起きているかをリアルタイムに認識できるように努めた。ただ、それは根本的な解決策ではなかった。とにかく火消しに回っているような状況で、課題の根本に対して目を向けられていなかった。やっている感があるのが余計怖い。自分のリソースをどれだけレバレッジが効く対象に避けるか、重要非緊急領域にいかに普段から時間を避けるか。経営者として組織作りを最注力テーマに据えていたはずが、完全に甘かった。とても反省。

新しいあたりまえ作りに挑戦しやすい時代

書き始めるとものすごく長くなってしまったが、最後に今後について。

個人的に反省すべき点は多いが、一方でこれからの未来にはワクワクしている。今、社会全体に正解がなく、誰もが横一線で未知の時代を生きている。タイムマシン経営のような、どこかの正解を持ってくるアプローチが取りづらくなり、それぞれが変化に適応しながら自分たちにとっての正解を描いていく時代になった。それはすなわち変化を是とするスタートアップが躍動できる時代であり、新しいあたりまえづくりに挑戦しやすい時代だと感じる。

そんな中、10月からは新しい仲間も増え、採用活動もさらに強化する。既存事業が伸び、財務基盤が以前よりも安定し、新しい事業づくりにチャレンジできる。世界的には最悪の一年だったが、この期間があったから会社がより強くなったと振り返れる時期がくると信じている。