出会い後に読んだ記事が、深く繋がるきっかけに。 人生ストーリーからがんを身近に感じて欲しい。
サマリー
一般社団法人キャンサーペアレンツで、子供を持つがん患者のための活動を続ける西口さん。自身もステージ4のがんを患う当事者です。父ががんになった経験を持つ平岡さんは、西口さんのanother life.を読んで、活動に関わることを決めました。その後2人はどのように協働していったのか、お話を伺いました。
パートナー企業紹介
がん患者コミュニティサービス「キャンサーペアレンツ」の運営
導入事例
another life.記事掲載
プロフィール
左:西口 洋平/がん患者コミュニティサービスの運営
人材会社で働きながら、こどもを持つがん患者のためのコミュニティサービス「キャンサーペアレンツ」を運営する。
右:平岡 仁志/大企業とスタートアップの協業支援、大学生のキャリア支援
様々な事業創造支援プログラムを提供している株式会社ゼロワンブースターにて、大手企業や自治体がスタートアップを支援することで事業共創を目指すアクセラレータープログラムを運営。主に医療ヘルスケア分野が専門。また、NPO法人にて大学生を中心にキャリア支援を行う。
━お2人が知り合ったのはいつですか。
平岡:2016年の6月に、自社が関わっていたアクセラレータープログラムの説明会に西口さんがいらっしゃったのが最初です。
西口:キャンサーペアレンツの活動の資金や事業拡大のためのアドバイスをもらいたいと思って参加しました。その年の4月にサービスを立ち上げていて、自己資金で活動を続けていく限界が見え始めていた時期だったんです。
平岡:説明会の途中で西口さんと少し話したんです。ざっと活動内容について聞いた最後に、「私自身が当事者なんです」と言われました。相当な衝撃でしたね。ただ、その場ではそれ以上の深い話にはなりませんでした。
西口:自分のがんの話をすると、相手がその話に集中し過ぎて、肝心の事業の話ができなくなるんですよ。だからその時は、最後に軽く告げる程度にしました。
平岡:その夜に、気になって西口さんのことを調べました。いろいろ調べていく中で、another life.の記事を見つけたんです。読んでみると、共感できるポイントがとても多くて驚きました。特に小さなお子さんの話に、強い衝撃を受けました。
実は私が大学生の時に、父が胃がんになったんですよ。ちょうど私は一人暮らしをしていた時期で、がんの事実を聞かされたのは手術が行われる直前でした。父は心配させないために隠していたようです。その時は大学辞めるべきかどうかなど、これからの人生どうしていくか随分悩みました。
その経験があったからこそ、小さい子どもを持つがん患者である西口さんが父と重なって感じられて、強く印象に残ったんです。自分自身が当時抱えていた、がんになった親を持つ子どもの不安な気持ちも思い出して、キャンサーペアレンツの活動に共感できましたね。
あとは、30代で一番脂が乗っていて、がむしゃらに働いている時に、ある瞬間から運命が変わってしまうことに衝撃を受けました。父も働き盛りの時にがんになって、結局仕事をやめざるを得なかったことを思い出しました。
記事が名刺代わりに。活動を広げるきっかけに
ーanother life.の取材のきっかけはなんだったのでしょうか?
西口:ちょうど活動を始め、多くの人に取り組みを知ってもらいたいと考えていた時期に、知人からの紹介でanotherlife.さんの取材を受けました。記事が公開されてからは、特に身近な人からの反響が大きかったですね。自分の経験や考えを、時間の流れに沿って話すことってないじゃないですか。だから、そんなことを考えてたんだと驚かれました。
あとは、自己紹介のツールとしても役に立ちました。初めて会う人たちにリンクを送って「これ読んでいってください」と伝えたり。活動を広げるためにいろんな人と会う中で、自分をわかりやすく伝えられる記事があるのは大きかったですね。
選択と行動で人生は変わる。活動を通して提供したい価値
━平岡さんが連絡されてから、実際にお二人で活動されたのですか?
平岡:始めはアクセラレータープログラムの中で支援させていただきたいと考えていましたが、西口さんの事業と相性が合わず、上手くいかなかったんです。そのため、一回は関係が途絶えました。
ただ、ずっと力になりたいという思いは消えなかったので、NPOの一員としてやっているキャリア支援の活動と繋げることを考えました。西口さんの生き方をもっといろんな学生に知ってもらうべきじゃないかと考え、2016年の8月に再び西口さんに声を掛けました。
最初は社会人向けの講演から始まり、大学生や、起業を目指す人向けなど様々なコミュニティで講演してもらいました。西口さんは講演のターゲットに合わせて本当にしっかり準備してきてくださるので、聞き手に響く講演の連続でした。
大学でのキャリアの講義では、西口さんのanother life.記事を使わせていただいたこともあるんですよ。「キャリアとリーダーシップ」というテーマで、サークルの代表や部活のキャプテンなどトップがメンバーに対して発揮するリーダーシップではなく、自分の人生をどう導くかというセルフリーダーシップを伝えることが目的の講義でした。
西口さんの人生の節目を切り取って問いを用意し、自分だったらどう行動するか学生に議論させるんです。例えば、仕事をバリバリやっていて突然がんになったときを切り取って、この状況であなたならどうしますか、と問いを投げます。すると、仕事を完全にやめて好きなように生きたいという意見などが出てくるんですよ。
そこで、西口さんが実際にとった行動を伝えるんです。絶望を感じるような状況に陥っても、そこでくじけずに、自分と同じように困っている人がいるということに気が付いて、課題を解決するために多くの人を巻き込んで事業を作った。この西口さんの行動を見て、学生にはセルフリーダーシップを持った選択と行動で人生は変わることに気づいてほしいんですよね。
西口:そうでもしないと自分自身のバランスが取れないというネガティブな面もありましたけどね。ただ、辛さが勝っちゃうと絶対辛いわけですよ。仕事で評価されたり、誰かの役に立てた方が頑張ろうと思えるので、それでやっているところもあります。
平岡:様々な葛藤がある中だと思いますが、それ含めて考えてもらえるといいなと思ったんです。
西口:自分を使ってくれてうれしいです。誰かの役に立っていることは生きがいになりますし、平岡さんに呼んでもらうことで、大学生など普段の活動ではリーチできない層に、私たちの活動を知ってもらえるのが大きいですね。
私たちの生きにくさは、自分の体の辛さよりも周りとの関係性によるところが大きいんです。そのためには、がんに対するリテラシーを上げることが重要です。平岡さんがいろんな層の人々との接点を作ってくれることはとてもありがたいですね。
━最後に、今後の展望を教えてください。
西口:私たちの活動を、ビジネスとしてしっかり回るようにしたいと考えています。今の段階では、社会的に意義があることは認めてもらっていても、マネタイズが難しい。がんという領域に対して、どんな事業ができるか想像できない企業が多いんです。でも、社会には誰も考えてもいなかったサービスが次々生まれている。僕たちも、ソーシャルビジネスという言葉に逃げるのではなく、しっかりと価値を出してお金の生まれるビジネスを考えていきたいです。
平岡:西口さんの活動は意義があると思うので、今後も協力していきたいです。西口さんは継続性のある事業にすることまでしっかり考えているので、事業としても応援したいと思っています。がん患者さんのコミュニティがあるからこそできることがあるので、それを生かして事業化し、患者さんにとってのプラスにしたいと思いますね。西口さんには何もお返しできていないまま、お時間をいただいているので…。
西口:逆ですよ、僕はいろんな機会をいただけるので、本当にありがたいです。それに、タイミングによって、支援する側とされる側って変わると思うんです。一方的だと続かなくて、双方向的に支援しあってこそ継続性がある。今回はお世話になったから次は助けようという気持ちの連鎖によって、つながりが深まっていくと感じています。
another life.では、誰もが「自分にとって幸せな人生」を歩むことができるような社会、世界を目指しています。「やりたいことが見つからない」「やりたいことを諦めた」そんな悩みやモヤモヤを感じる人が、人生経験のシェアリングを通じて、新しい人生を一歩踏み出すきっかけを提供したいと考えています。記事を読んでサービスに興味を持って頂けた方は、下記窓口よりお気軽にお問い合わせください。